アメリカ中西部での生活、仕事、英語、スポーツ、文化に関する草の根評論
「愚直」をどう英訳する?---------平明英語の勧め
先日の、”英語に訳し難い日本語”のエントリーをした後、早速、又そういうケースに遭遇しました。

当方のお客さんである、ある日系子会社の担当の方と食事をしていた時の事。最近、その日系子会社に本社より幹部の方が視察に見えたとか。その時の米人幹部とのミーティングで、くだんの幹部は経営の方針とともに、経営の考え方を披露しました。

曰く、「私の経営のポリシーは’愚直’という事です」。

この会議には、日本人の通訳の人がいたそうですが、目を白黒させながら通訳したとか。この食事の席の担当者は、英語が堪能ではなく、この通訳がなんと訳したか聞き取れなかったそうです。

当方も一瞬、”Honest”や”Straightforward”が思い浮かびましたが、「これはなかなか難しいぞ」と想いました。
「愚直」論

この、’愚直’という言葉は、日本のビジネス社会でも少し流行っている用語のようです。「正直すぎて気の利かない位に物事に取り組め」という事でしょうか。この諸事多難な折、物分りの良いあっさりした取り組み姿勢では取り残されるぞ、という事でしょう。これを、このお客さんの会社の日本人幹部は、経営ポリシーに据えたのでしょう。

通訳は泣く

一般にこういう企業の、特に幹部の発する言葉は通訳者泣かせの用語が多いようです。当方も経験がありますが、「紺屋の白袴」や「背水の陣」等の言葉が飛んできます。

それはそうでしょう。一代で企業の幹部に栄達した面々。人を動かすアウトプットの言葉が単純なわけありません。なにかひねりを利かし人を鼓舞するような言葉を発します。

通常、ここら中西部の田舎の会社の日系企業の通訳は、日本から学生の頃アメリカに渡り、滞在10年、20年の英語圏経験者が多いようです。学校や一般生活で英語と格闘しているものの、特に通訳としての勉強をしたり、資格を取ったりはしていない様です。

そんな通訳の方々。我々古い世代でもなじみが無くなりかけている日本語の故事ことわざ。これをよどみなく訳すということは至難の業のようです。

熟語化日本語と平明英語

もう一つ我々も含め、通訳専門家でない人間の遭遇する陥穽は、こうした故事ことわざを対応する単語や熟語で対訳しようとする事です。

日本には故事ことわざや四文字熟語が雲霞の如くあり、一般生活やビジネス社会にも定着しています。しかし、英語には学問や小説の世界は別にして、一般にはあまり難しい一語で言い表す(ある人はBig wordと呼んでいましたか)言葉は使われないようです。

ためしに、今評判のGoogleの自動翻訳で「愚直」を引いてみると、”Naivete”という言葉が出てきます。フランス語のナイーブから来ているようで、英和辞書で引きなおすと「素朴さ、単純」と出てきます(これも少しマッチしがたいですが)。この言葉は今までアメリカ滞在10余年。ビジネスの会議やセミナーにも参加しましたが、聞いたこともありません。

この「愚直」、おそらく一般のアメリカ人が表現するとすると、

”Acting honestly and straightforwardly regardless others accept it, or not.”

位でしょうか(対訳ではないので、他にもいくつか平明な表現があると想います)。

これを、熟語で対訳しようとすると、

「『愚直』...ううむ。一回Googleで引いたことがある...なんといったけ、フランス語から来ている....(汗)...」

と、頭の中が真っ白になるのではないでしょうか?熟語化日本語を平明英語に置き換えるのが、これを防ぐ最良の方法ではないでしょうか?

もう一つ考えてよ日本人幹部さん

言葉を伝える時に、もう一つ考えねばならないのが、この「愚直」の考えが経営ポリシーとして、広くアメリカ人に認識されるかどうかです。

生き馬の目を抜く厳しいアメリカビジネス社会。そこで「”Naivete”即ち、素朴さ、単純」というフレーズが幹部の言葉として、適当かという事です。

最近も、こちら地元ルイビルの地場企業でありかつグローバル企業のGEが、そのシンボルとも言うべき家電部門を売りに出すというニュースが飛び交っています。優良企業のGE。相対的に収益力の下がった家電部門は、売却しようというものです。このニュースで地元は大騒ぎ。市の関係者やメディアが、ルイビルのGE幹部に問い合わせをするも「ノーコメント」で、腹を明かしません。「素朴さ、単純」のかけらも無い、マネジメントスタイルです。

こんな社会に、子会社といえども「愚直」を表明し、うまく英語に訳しても理解されない確率は大きいでしょう。こんな所も考慮に入れる必要があるようです。



さて、「愚直」がポリシーの、くだんのお客さんの会社。アメリカの景気後退を受けて終始悪化に苦しんでいるとの事。対策として、メキシコに移転する案も一部では囁かれているとか。アメリカ人にどう説明をつけるか、「愚直」をよっぽどうまく英訳しないといけないようです。

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