アメリカ中西部での生活、仕事、英語、スポーツ、文化に関する草の根評論
「私ゃ近所の皆様にあわせる顔が無いのよ」と“I believe you know who you are.”の世界----日本とアメリカの処世訓の違い
最近はYouTubeの発達で、昔の歌がいとも簡単に聞けるようになりました。当方も週末の夜は、一杯気分でこれを楽しんでいます。当方の楽しみは’60年代から’70年代の歌です。若かりし多感な年頃に聞いた歌はいつまでも忘れるものではありません。

その中で最近、高石ともやの「受験生ブルース」を見つけました。



なんとも懐かしい歌です。当方の過ごした学校は(大分高専)、いわゆる受験戦争というものはない学制でしたが、それでも学校の勉強で”ねじり鉢巻”の時に良くこの歌を聞き、同じ世代の受験生達へ思いを馳せたものでした。

こちらアメリカでは、大学入学時の受験よりも、大学に入ってからの勉強の方が熾烈を極めます。時期の違いはあれ、学生には日本とアメリカ同じ様な苦しみが降りかかります。よって歌われている歌詞は、日米多少の文化の違いはありますが、こちらの学生にも概ね理解できるものです。

しかし一点だけは、こちらの学生にも理解に苦しむ歌詞の部分があります。それは、

「かあちゃんも俺を激励する。一流の大学に入らねば、私ゃ近所の皆様にあわせる顔が無いのよ」

です。特に「近所の皆様にあわせる顔」の部分です。

世間の存在

この世の中には、各個人と神しか存在しないと考えるこちらアメリカ社会では、世間の存在はありません。即ち、「近所の皆様にあわせる顔...」という考えはありません。

よって、この部分はなかなか英訳出来ませんし、英訳してもこちらの人達にとっては理解に苦しむ内容です。

無理に訳してみると、

“My mother encourages me to study hard. It would be a shame to neighbors if I failed to join a famouse university.”

位でしょうか。

この”Shame”という言葉は、こちらではなかなか見聞きするものではありません。当方がアメリカに15年ほどいますが、ラジオテレビのニュースや新聞を含め、これを見聞きしたのは数回でしょうか。少し軽い意味で”Embarrass”が使われますが、これとてそうそう見聞きするものではありません。

ここに歌われている、「近所の皆様にあわせる顔...」や「世間をお騒がせした」オンパレードの日本とは大きな違いがあります。よって、この英訳の苦労作は、まずこちらの人には理解されないと考えた方が良いでしょう。

“I believe you know who you are.”

それではこちらアメリカでは、こんな時に親の”かあちゃん”としてはどんな思考内容なのでしょうか?どんな言葉が出てくるのでしょうか?

旧聞に属しますが、ある日本のテレビ番組を見ていました。その中に日米ハーフの若者が出ていました。その若者のアメリカ人のお母さんが、番組の中でメッセージを残していました。それが、

“I believe you know who you are.(私は、あなたが己の本分を知っていると信じているからね)”

というものでした。決して「しっかりしないと、近所の人に恥ずかしいよ」とか、「世間に顔向けできないよ」というものではありません。「自分が何であるか、それをしっかり掴むのが大事です」というのが、こちらの大部分の人達の、処世訓の様です。

この違いを理解しないと、如何に英語をうまく訳しても相手に伝わらずにパニックになるだけです。




この高石ともやさんは、アメリカにも住んでいたことのある、なかなかの国際人でもあります。しかし、このステージは、なかなか洗練された演奏と歌ですね。

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テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

コメント
この記事へのコメント
こういう反応の違いは、農耕民族と、狩猟民族の名残を具間見るような感じですね。
下手に謙遜すると、出来るくせにウソついたとか言われますし、言葉の違いは、本当に文化の違い…学校でも、この点をもっと強調してくれると海外に出てヒエーとなる人が少なくなると思うのですが…(私は確実にヒエーの連続でしたのでっ)
2009/04/20(月) 17:52:56 | URL | うろこ #-[ 編集]
Re: タイトルなし
うろこさん、コメントありがとうございます。

> こういう反応の違いは、農耕民族と、狩猟民族の名残を具間見るような感じですね。

まさに、日本は隣が田植えを始めたらうちもはじめなきゃ、世間では刈り取りが始まったから刈り取りをしなきゃ、という農耕民族的思考ですね。

こちらでの実話です。アメリカ人の友達の息子さんが高校生のときに、その息子さんは高校の開闢以来の秀才でしたが、自動車の板金が好きだという事で、大学に行かずに板金工の道に進みました。親の経済状態も良かったのですが、本人の好きな道を進むと言う選択でした。

まさに、”He knows who he is."の処世訓でした。
2009/04/21(火) 13:15:17 | URL | いちろう #-[ 編集]
いちろう様
拍手コメント拝読しました。お知らせいただきましてありがとうございます。
調べてみましたところ ライヴドア内の障害のようでして 現在復旧作業に努めているのだそうです。
いつなおることやら なのです。 なおった時点でコメントを頂戴してもよろしいのですが どんなコメントなのかしら とちょっと興味津々です。よろしければ こちらにお書きいただきますと それをコピーして いちろう様よりのコメントとして載せたいと思いますが 如何でしょうか。
せっかくいらしていただきましたのに 申し訳ございませんでした。御訪問ありがとうございました。

それからこの記事とても面白い視点ですね。ほんと そうなのです。生徒さまによく聞かれるのが ホームステイ先のホストファミリーに 「いたらぬ娘/息子をどうぞよろしくお願いいたします」 という手紙を書きたいというものなのですが 全訳してしまうと 「これからあなたが娘(息子)にしてくれるであろうことに対して予め御礼を言います」 と 世話をしてよね みたいなニュアンスになってしまうのです。それに この「いたらぬ」という感覚も欧米人には通じないと思います。フランス語にも存在しませんね その感覚も表現も。 
2009/04/21(火) 21:49:18 | URL | Lisa.K #6NxBSyw.[ 編集]
Re: タイトルなし
Lisa.Kさん、コメントありがとうございます。

> それからこの記事とても面白い視点ですね。ほんと そうなのです。生徒さまによく聞かれるのが ホームステイ先のホストファミリーに 「いたらぬ娘/息子をどうぞよろしくお願いいたします」 という手紙を書きたいというものなのですが 全訳してしまうと 「これからあなたが娘(息子)にしてくれるであろうことに対して予め御礼を言います」 と 世話をしてよね みたいなニュアンスになってしまうのです。それに この「いたらぬ」という感覚も欧米人には通じないと思います。フランス語にも存在しませんね その感覚も表現も。 


ご指摘のことを含めて考えると、英語は英語のスキルはさておきその前の文化的な背景で、話しが通じなくなっている感じですね。こちらでは”愚妻”や”愚息”というのは全く通じませんね。奥さんや息子さんは称賛する対象で、へりくだる対象では全くありませんね。

2009/04/24(金) 22:22:23 | URL | いちろう #-[ 編集]
いちろうさん、こんにちは
“恥の文化”は日本独特ですね~。

“I believe you know who you are.”

子供の持っているものを多くもなく少なくもなく、
過不足なく受けとめて評価できる親に私もなりたいものです。
2010/06/14(月) 17:13:32 | URL | Nemo #6jn2IUrI[ 編集]
Re: タイトルなし
Nemoさん、コメントありがとうございます。


> “I believe you know who you are.”
>
> 子供の持っているものを多くもなく少なくもなく、
> 過不足なく受けとめて評価できる親に私もなりたいものです。


日本サッカー万歳ですね!先程、(アメリカに居る)息子から早速お祝いの電話がありました。

息子は小学校からこちらに居ますので、当方もアメリカのこの考えが半分、日本の親子関係の考えが半分です。「彼の進路は、自分にあった道を見つけて行ってもらいたい」とも思って接してきました(日本的な親のあせりも、少しあったかな)。

今では時々、家に帰ってきたり電話をくれたりで、まずまずの親子関係です。日本でもこういう親子関係はあるでしょうが、当方のはアメリカの多面性が育ててくれたのだと思います。
2010/06/15(火) 13:50:30 | URL | いちろう #-[ 編集]
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