アメリカ中西部での生活、仕事、英語、スポーツ、文化に関する草の根評論
グローバルエンジニアへの道―――使える英語世界への“飛び込み”方
前回お知らせしたように、1月中旬に日本に帰国して母校(大分高専)で、学生さんを主対象にして講演をしてきました。題して、「グローバルエンジニアへの道―――使える英語世界への“飛び込み”方」です。

やや長くなりますが、ここにその要旨を掲載します。英語がまったくダメだった人間が、30歳台半ばでどうやって英語をマスターしていったかという経験談です。学生さん達は、グローバル化の波を当方の経験談を一助として乗り切っていって貰いたいものです。
現在GPフォーラム講演
1-12-2010

グローバルエンジニアへの道~使える英語世界への“飛び込み”方

和田一郎(S47年機械科卒)



私は昭和47年(1972年)に大分高専を卒業して、今年で38年になります。そのうちおよそ半分になる18年間が、アメリカ滞在となりました。

私は学生時代は言うに及ばず、卒業後社会人になってからも10年以上は英語に全く縁の無い生活をしていました。しかし、30歳台半ばになり、当時の国際化により英語世界に飛び込まざるを得なくなり、それから一念発起勉強を再開。今では英語圏で仕事、生活を行っています。

現在の日本では、グローバル化の波が押し寄せており、大分高専の教育理念にも“人間性に溢れ国際感覚を備え、探究心・・・”というくだりがあり、各種プログラムが準備されています。しかしながら英語を使えるようになるのは、なかなか難しいのが一般的な日本。在校生の中にも英語に苦労、躊躇している人が多いと思います。そんな方々を対象に、今回は私の英語へ“飛び込んだ”時の経験をお話しをしてみたいと思います。。

使える英語習得には、技術論もさることながら、恥ずかしさや遠慮といった心理的な障壁すなわちメンタルバリアーを取り除く事が大事です。それから、英語習得方法にも一考を要します。是非私の経験談により、一人でも多くの学生が英語の世界へ“飛び込んで”もらいたいと思います。

講演内容

本日の講演内容の概要は以下の通りです。

1.私の英語歴

2.使える英語世界への“飛び込み”方
     a.メンタルバリアーの解放
         1. 飛び込み
        2. 押し出し
        3. 間違い覚悟
    b.聞き取り & 会話練習

3.まとめ


私の英語歴

まず私の英語歴を紹介します。英語全くダメ時代からなんとか使えるようになり、グローバルエンジニアとしてやっている今日までの変遷です。

1. 高専時代
英語に縁の無いダメ学生時代でした。友人の中には英検一級や二級を持っている人がおり、彼らから英会話教室に誘われたりもしましたが、教室の後の方でオドオドしながら参加したのを覚えています。低学年の担任が松江先生で英語のご担当でもありましたが、その教えを受けた私は全く英語ダメ学生でした。

2. 20歳台
私は大分高専卒業後、地元のN電線に勤め始めました。そこでも英語には縁の無い、且つダメ社員の生活を送っていました。大分高専の先輩の中には、海外企業との技術提携で外国人を相手に働いている方もいました。私はそんな外国人を前にすると、ドキマキして何も言えない状態でした。しかし、国際化の波はやがてやってくるとの思いで、英語のテープ等を聞き始めてはいました。

3. 30歳台半ば
30歳台半ばになり、私はM金属の自動車機器事業部に転籍となりました。当時はプラザ合意後の円高時代で、自動車会社はのべつアメリカに進出。それに伴って自動車部品会社もアメリカ進出するという時代でした。私の勤務していた事業部も、アメリカに子会社を設立しそのプロジェクトがスタートしたところでした。

当時の私は依然英語ダメ社員でしたが、時代の趨勢でそのプロジェクトの一員(国内対応)に有無を言わせず指名され、英会話クラスに送り込まれました。それをきっかけに私も英語を一念発起勉強し始めました。いわゆる英語社会に“飛び込んだ”状態でした。それからは、後に詳細を述べますが英語への動機と取り組み姿勢により、だんだん英語のコミュニケーションが取れてきました。

4. 40歳台以降
41歳になり、アメリカ赴任となりました。子供達はまだ中学生と小学生で、家族共々不安一杯の赴任だった事を覚えています。しかしその子供達もアメリカで学生生活を過ごし、そのままアメリカで就職しています。赴任後は毎日が英語の環境で、間違えながら、引っかかりながら仕事やコミュニティで英語を使い習得してきました。

5. 現在
私は、数年前にアメリカにある別の日系の会社に転職し、現在に至っています。現在は、営業技術製造関連のVice-Presidentをやっています。顧客からの英語や日本語の情報を社内のアメリカ人に展開をしたり、社内の技術製造関連の目標達成の為の総括を行っています。

使える英語世界への“飛び込み”方

日本では、英語への一歩に“飛び込め”ない人が数多くいると思います。ここで私の30歳台半ばで英語に“飛び込んだ”時の経験をお話しして、皆さん方への参考とさせていただきます。

1. メンタルバリアーの解放 

a. その1~飛び込む

30歳台半ばの海外プロジェクト開始時は、私はTOEIC200点台でした。それでもプロジェクトメンバーに指名され、会社の主催する英会話教室に通い始めました。そうこうするうちにアメリカから子会社で採用された現地アメリカ従業員が日本にやって来はじめ、しどろもどろの英語コミュニケーションも余儀なくされ始めました。要するに準備も十分ではなく、文字通り英語に“飛び込んだ”状態でした。

それでも何とか実践を続けていたら、コミュニケーションが徐々に出来始め、1年か1年半後にTOEICを受験してみたら580点、英検2級があっさり取得できました。このあっさりというのは、大して試験対策はしなくて試験を受けたら、英検2級が取れた、という事です。やはり実践の力というのは英語学習のモチベーション維持とそれに伴う英語力の向上に大きな力を果たします。

ここで皆さん方への提言ですが、皆さん方も英語を使う機会が来たらまず飛び込んで下さい、という事です。現在本校では、海外インターンシップ、提携校との交流会がありますし、又個人的な旅行やボランティア活動があると思います。それらの機会があったらば躊躇せずに手を挙げて申し込み、英語世界へ飛び込んでいただきたいと思います。

「そうは言ってもやはり単語も知らないし、文法も不勉強だし...」と心配になる学生さんもいると思います。しかし心配しないで下さい。皆さんも飛び込めます。なぜならば、①実際に使える英語世界で使われている英単語数はそう多くない、②同じく文法、用法もそ中学時代の英語とそう変わらない、事があります。

b. その2~押し出す

英語を使う、即ち英語を話すにはその会話文化を理解する必要があります。理解してその会話モードに入っていく必要があります。英語には日本語に無い会話文化があります。「遠慮」や「謙虚」という考えのフレーズや言葉はありません。又、言葉で表現しない限り相手の理解は得られません。

たとえば初対面の挨拶と自己紹介でも日本語と英語では随分違います。日本語では、

「和田です。宜しくお願い致します」

と話すくらいなもので、後は阿吽の呼吸でお互いの事を推し量ります。ところがこれが英語の世界になると、

“Hi! I’m Ichiro Wada. I’m from Indiana. My major was mechanical engineering.”

と、二言三言日本語より多くなります。聞かれもしないのに言うという、この遠慮の無い押し出す文化が英語の特徴です。このモードにならなければ、なかなか英語世界には入っていけません。

c. その3~間違い覚悟

異言語の習得ですから間違いはつきものです。私も間違いながら英語を習得していきました。且つ、英語世界に来て見ると、こちらの英語は日本で習った文型通りではありません。よって皆さんに伝えたい事は、英語の間違いを気にするなという事です。

私も目からうろこの事例がありました。くだんの30歳台半ばの英語学習を再スタートしたばかりの、海外プロジェクトの時でした。当時アメリカから子会社の従業員が日本へ実習にやって来始めました。当時私は組み立ての責任者で、アメリカ人従業員に組み立ての実習指導をしていました。組み立て作業をした後は、製品をよく確認して次工程に流さねばなりません。ある日の事、これを誠心誠意、大きな声で身振り手振りで言いましたが、単語が十分出てきませんでした。

“You…uh…check…, then …uh…move it uh….next…..”

これは何を言いたかったかというと、

“You should check it, then move it to the next station.”

でしたが、英語初心者では咄嗟に単語がすらすらと出てこないというのは、皆さんも経験があると思います。

その日、私は「ずいぶんひどい間違い英語を使っちゃたなぁ」と意気消沈していました。しかし、その日の実習反省会でアメリカ人の責任者は「Mr. Wadaはよく英語でコミュニケーションをとってくれている」と誉めてくれました。誠心誠意、大きな声で言ったのが良かったのでしょう。それから目からうろこで、こんな調子の英語を使いまくりました。

当然のことながらこうしたトライアンドエラーをする事は、英語の上達にもなります。これから、私の英語もだんだん矯正されてなんとか聴けるものになって行ったようです。この間違いのステージというのは、英語の上達には必須のものなのでしょう。

是非皆さんも間違い覚悟で、英語にチャレンジして行って下さい。


2. 聞き取り & 会話練習

英語はメンタル面の影響が大きいので、そのバリアーを解放するのが効果的とはいえ、依然勉強即ち練習が必要です。それを以下にあげます。

a. 聞き取り

英語を使えるようになるには、まず聞き取れなければなりません。如何に英語を勉強し立派なフレーズを準備して会話に臨んでも、相手が何を言ったのか聞き取れなければ、何と答えて良いか分かりません。皆さん方が英会話を始めて、頭の中は真っ白になるのは、相手が何を言ったか分からない時ではないでしょうか。

私の場合は、もっぱらこの聞き取り練習即ちヒヤリング練習を行いました。当時は今ほどネットが発達していませんでしたので、英語教材会社のCDを買い込んでもっぱら聞きました。又、英会話教室や実践会話でのやり取りが聞き取り能力を高めていったのは間違いありません。

b. 会話練習

インプットとアウトプットは違う能力を要求されます。即ち、英語を勉強していくら頭の中に入れても、それを表現する練習をしなければ話せるようになりません。これは日本語を考えてみても分かると思います。知識豊富な人が、話しがうまいかというとそうでもありません。学者タイプという言葉がありますが、学者の中には話しがうまくなく朴訥としか話さない人がいます。

反対に知識はそうなくても話しのうまい人はいくらでもいます。その典型が“男はつらいよ”の寅さんです。“学”はなくても皆をひきつける話術は素晴らしいものです。インプットとアウトプットの能力は違うという良い例でしょう。

これが母国語の日本語なので朴訥で済みますが、異言語の英語だと話せないという事になります。よって英語を話せるようになるには、英語の話す練習が必要だという事です。私の場合は、上記の会社の主催した英会話教室にせっせと通いました。

c. ポイント

その1は、聞き返し、言い換えは恥ではないという事です。

聞き取り練習と会話練習が重要だと述べると、日本人のこだわりでそれに専心する人が出てきます。聞き取りも会話(話す事)も100%分かろうとすると、それらの習得は膨大な時間を要します。しかし皆さん方は、他の専門教科も勉強しなければならない高専生です。費用対効果を考えなければなりません。

聞き取りも会話(話す事)も100%わかる必要はありません。使える英語世界では、聞き返し、言い換えという便利な方法があります。これは決して恥ではありません。在米18年の私でも70%~80%の理解度でしょうか。よく聞き返し、言い換えをします。ネイティブ同士の会話でも、この聞き返しや言い換えのフレーズはよく出てきます。

その2は会話(話し)は大きな声で、という事です。

皆さんの英語が通じていないほとんどの原因は、その話す声が小さい事から来ています。文法や発音が気になり自信が無くなるのでしょう、皆さんの英語は大抵小さな声になります。それで相手のネイティブが聞き取れない、即ち伝わらないとなります。皆さんの英語がダメなわけでも何でもありません。

大きな声は、会話技能の一番大きなファクターという事でしょう。

まとめ

私が大分高専を卒業した頃の1970年代から較べると、国際化、グローバル化の波ははるかに高く押し寄せています。学生の皆さんがその波に乗り切れるように、本日の講演を参考にしてもらい、英語世界へ飛び込みグローバルエンジニアとしての道を歩み始めてもらいたいと思います。





スポンサーサイト

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

コメント
この記事へのコメント
なんと深い教えのたっぷりつまった講演でしょうか!まったくもっておっしゃるとおり!と膝にアザが出来そうです(このアタリの行間は日本語ならでは…でしょうか?!)
言葉の違いは文化の違い、英語を共用している米国と米領サモアですが、お互い自分のやり方を譲らぬ人々のコミュニケーションのすれ違いを見ていると(一歩引いた立場からならば)笑えるほどです(^^)
そんなことはさておき、
母校の後輩生徒さんたちに、「勇気」の種が植わったことと思います!
この勇気が慣れになるまでの間さえ堪えれば、あとは随分楽になりますもんね。

2010/02/06(土) 09:52:42 | URL | うろこ #-[ 編集]
Re: タイトルなし
うろこさん、こんにちは。

> 言葉の違いは文化の違い、英語を共用している米国と米領サモアですが、お互い自分のやり方を譲らぬ人々のコミュニケーションのすれ違いを見ていると(一歩引いた立場からならば)笑えるほどです(^^)
> そんなことはさておき、
> 母校の後輩生徒さんたちに、「勇気」の種が植わったことと思います!
> この勇気が慣れになるまでの間さえ堪えれば、あとは随分楽になりますもんね。

勇気について言えば、今でも当方は少人数のセミナーで(英語)で質問するのにドキドキしますね。何年英語圏にいても変わらない日本人の特性なのでしょうか。

今回、主講演とは別に小講話も行い、久し振りに日本人の集団、特に若者たちの集団に接しました。その時には近くで学生さんたちの様子を観察しましたが、静粛でNeatなのは(変な日本語でスミマセン。感じは分かると思いますが)良いのですが、それだけにこの勇気、文化の殻を破るのが大仕事だろうなと感じました。

英語を学ぶという事は文化と勇気を学ぶ事ですね(オッ、新しいフレーズが出来ました)。
2010/02/07(日) 03:07:52 | URL | いちろう #-[ 編集]
はじめまして!
高専を卒業後に大学へ編入し,今は大学院生をやっている者です.

「グローバル エンジニア」で検索してたどりつきました.偶然にも高専出身の方のブログが見つかって驚いています.そして大変参考になりました!ありがとうございます!!

私は将来ソフトウェアエンジニアとしてシリコンバレーで働きたいと思っています.そのために日々英語の勉強(というか練習)をしたりしています.

修士卒で直接シリコンバレーに就職するのは難しいと思い,どうすればシリコンバレーに繋がるのか日々考えています.どうすればよいのでしょう?もしアドバイス等頂けると幸いです.
2011/04/07(木) 00:33:58 | URL | 元高専生 #DtxnJExI[ 編集]
Re: タイトルなし
元高専生さん、コメントありがとうございます。

こちらに、同じような質問を受けて、回答した資料があります(PDF)。本ブログ上でダウンロード出来ないので(当方の能力不足:苦笑)貴方のE-Mail番号があれば、もう一度コメント欄(「秘密:管理者にだけ表示を許可する」を使えば公開されません)に送付してください。

「秘密:管理者にだけ表示を許可する」をテストするのに、事前に一回”空”で送付テストをしてもらってかまいません。お願いします。

是非ともお力になりたいです。
2011/04/09(土) 12:10:37 | URL | いちろう #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/04/10(日) 03:36:29 | | #[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック