アメリカ中西部での生活、仕事、英語、スポーツ、文化に関する草の根評論
アメリカ企業の長時間労働の実態-----コミットメントと家族のはざま
いつも個人的にお便りを頂く大先輩のNさんから、アメリカで企業での長時間労働に関し質問を受け、それに対して答えさせて頂きました。アメリカのビジネス面での実情を知るのに、このやり取りをまとめておくのも(あまりまとまりませんでしたが)良いかなと思い、ここに掲載しました。



(問い)アメリカでも効率経営主義や最近の失業率の高さ等で、ホワイトカラーも仕事がきつくなり長時間労働になっているとの報道を見ましたが、実態はどうなんでしょうか?そうであるとすると、個人主義の国アメリカで、何がそういう長時間労働に駆り立てているのでしょうか?



(答え)

1. 私の見るところ、総体として日本のほうが長時間労働ですが、アメリカでも報道の通り長時間労働があります。

弊社は日系企業ですが、ビジネスの主流はアメリカ企業ですので、アメリカ人社長体制でやっています。やはり(最高)責任者となると彼も良く働いています。大抵日本人の私より遅くまで会社にいます。又、コンピュータ接続をして家でも仕事をしているようです。

何がそうさせるのか?これのキーワードは、日産のゴーンの言っていたコミットメントというのに行き着くようです。基本的にアメリカは終身雇用ではありませんので、仕事の条件が悪くなればホワイトカラーといえどもさっさと他社に移るのが普通です。最近は失業率も高くなり、やめたいけどやめられない人もいますが、当該社長は能力もありどこに行ってもそここの年収で働けるのに、と思いますが彼は弊社でよく働いています。

事在る毎に彼の口から出るのは、「私はオーナーからこの会社の存続を任されている」という事です。上に上げたコミットメントですね。サラリーマン社長ではありますが、アメリカでは階層も上がってくるとこの意識が強くなってきます。勿論それの見返りも多くしていますが。

2. 一般階層のホワイトカラーでも、”自分の仕事の責務は何か”という縛りが明確です。よってその責務を果たす為には、長時間労働も行います。

しかしながら、日本の企業に見られるような、ズルズル会社にいるというと非効率な長時間労働は行いません。アメリカの会社ではJob description(職務基準書)の存在が明確にあり、ある切り口では日本の企業よりはるかに高能率です(最近の弊ブログ【会議による生産性低下の日本のビジネス社会-----アメリカのビジネス社会との比較】をご覧ください)。

閉塞社会日本の長時間労働。その原因はこの部分の低い生産性にあるように思えます。

3.因みに、一般ワーカーではこの長時間労働はまずありえません。第一に時間外割り増しが5割増し(弊社例)、よってコスト的に痛手になる。又、サービス残業なるものは存在しない。これが発覚すると罰則を必ず受ける。又権利意識の強い当該作業者が、これを見逃すはずが無い。等です。



(問い)一般のホワイトカラーの場合にはJob descriptionに基づいて上位者から与えられた仕事をするので、組合がなければ仕事を完成させるために遅くまで残業することは当たり前ということでしょうか。(組合がなくても法律で残業規制はあるのでしょうが。)

極端に多くの仕事を割り当てられ、延々と残業仕事をし続けなければならないような場合はないのでしょうか。それに対しての仕事量の不満はないのでしょうか。それを処理するのが能力あり、とされるのでしょうか。



(答え)
1. 時間外労働割り増し賃金の権利の無い(日本でいうと管理職ですね)サラリーの>カテゴリーを、こちらではExemptと呼んでいます。これは、(時間外割り増しの)権利が無いが、就業時間の縛り等の義務も無くなる様にしたり、有給休暇制度の手厚く付与したり(年収が圧倒的に違うのが大きいでしょうか)で便宜を図っています。

このクラスで負荷がかかるのは、” あなたのミッションですよ。これらの便宜があるのだから、さあ働け!”という事で、両天秤にかけるからです。これは、日本と同じですね。

2. ビジネス社会で日本と違う面は以下の通りです。

(1)厳しい面
アメリカはトップダウンのビジネス社会で、上位者の権限は日本より強大です。日本の場合も上位者の権限はありますが、気に入らない会社の処遇は窓際に置くか、配置転換ですよね。

ところがアメリカの場合は、パフォーマンスの悪い下位者は呼びつけて即日首に出来ます(勿論、これに対する対抗措置で訴訟等も可能ですが)。これがアメリカでコミットメント追及のためのモチベーションになっているのは間違いありません。尤も当該下位者は、転職市場の流動性にあふれるアメリカでは、日本ほど深刻ではありません。

(2)緩い面
アメリカ社会全体の価値観として、家族主義があります(会社内家族主義ではありません)。人生の最大の幸福は家族と過ごす事です。これは、職位が上であろうが下であろうが、統一した価値観です。いくら”鬼の”ビジネスリーダーでも、この価値観は共有しており、昼夜働かせるのは(働くのは)これに反する事だという認識があります。

アメリカのビジネスマンが、稼ぐだけ稼いで、さっさとリタイアし悠々自適の生活を送る、というのはこの価値観からきているようです。

(3)決定的に違う面
アメリカは”個”の社会、非”一心同体”社会です。よって仕事上で、「相手が仕事を終えるまで、付き合う」や「部下の報告を待って確認するまで会社に居る」等はありません。日本では、これが長時間労働の原因の主たるものになっている感がしますね。




上記のファクター、主としてコミットメントと家族主義がせめぎあって、アメリカでの長時間労働が決まってるようです。Nさんが得られた報道も事実としてはあるようですが、私の見るところ、一般的には日本ほどの長時間労働にはなっていないようです(”群盲象をなぜる”ですが)。







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